日本酒専門誌『酒蔵萬流』039「新時代を見据え」(2024.1.20発行)

酒蔵萬流039号表紙

日本酒専門誌『酒蔵萬流』2024冬号(039)が1月20日、醸造用精米機メーカー 新中野工業から出版されました。

酒蔵紀行」では辻󠄀本店(岡山県真庭市)東鶴酒造(佐賀県多久市)を、酒販店様の取り組みや想いを紹介する「想い紡ぐ」は住吉酒販(福岡県福岡市)の取材と執筆を担当しました。

ご協力くださった取材先の皆様、制作スタッフの皆様、今号もお世話になりました。
ありがとうございました。

次号はいよいよ創刊40号。
そして……信じられませんが、初号発刊から丸10年を迎えます。

今となってはあっという間で 10年も続いたことが信じられませんし、そうした仕事に巡り合えること自体が極めて稀なことだと思うのです。
なにより広告を一切取らない媒体として10年間 中立を保ちながら業界の多様な世界を発信することに努めてきた新中野工業に、あらためて敬意を表します。

こうした想いについては、10周年を迎える次号にまた、あらためて……。

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【酒蔵紀行】
辻󠄀本店(御前酒=岡山県真庭市)
2018年冬号以来2回目の本誌登場でした。

前回の記事で触れた「全量雄町」を令和4酒造年度に達成した辻󠄀本店が 早くも次なる目標に「全量菩提酛」を掲げたことを軸にストーリーを展開。
なぜ御前酒=菩提酛なのか? 全量菩提酛達成までのタイムラインは? それに伴うリスクや対策、「全量雄町×全量菩提酛」で表現するこれからの「御前酒」とは……
さまざまな情報を整理し、これからの御前酒がはっきりと展望できる内容を目指して記事化しました。

地元・岡山の蔵元。且つ特上雄町プロジェクトや真庭発酵’s関連の取材を通して、あるいは去年東京と岡山で開催された「御前酒 全量雄町宣言!!」イベントなどでもたびたびお世話になっていることもあって、だいたいのことは承知していました。
でも、こうしてきちんと誌面に残す目的がないと、意外とお二人そろって着座でインタビューする機会ってないのですよね。

記事の終盤で書かせていただいた、兄弟のよき関係性や 蔵人の強力なバックアップがあってこその改革である旨の話は、こうした場があってこそ書けたのだと思います。
これからも御前酒の進化と深化の過程を取材し、書く機会がいただけたら嬉しいです。

東鶴酒造(東鶴=佐賀県多久市)
東鶴酒造を取材をするにあたり、蔵の新たな定番酒として2023年春に発売した「東鶴 THE ORIGIN」を取り寄せて試飲しました。
グリーンがかった色調と爽やかな香り。
舌を刺激する発泡感やシャープな酸と、 厚みを伴った甘みや旨味とのメリハリ。
こうして描かれるジューシーな味わいは、蔵主である野中保斉氏が それまでの定番酒の出荷を一時止めてまで突き詰めてきた理想の酒質であり、蔵として胸を張って差し出せる旗艦酒にふさわしいものでした。

野中氏がこの1本に行きつくまでには、さまざまなドラマがありました。
当時休造中だった蔵に戻り、復活を果たして再び蔵を軌道に乗せたこと。
2019年に佐賀県を襲った豪雨被害の復興とともに、フレッシュな酒を供給するための醸造環境を整えてきたこと。
取引先が順調に広がり、酒造りの幅が広がるにつれて、自分が本当に自信を持って造りたいと思える酒の方向性を見失ってしまったこと。
それでも定番酒だけは蔵の柱として変わらず大事に造り続けてきたこと……

野中氏はそうした経験をすべて糧にして、最高にして本人が理想とする定番酒を造り上げたのです。
記事ではそうした過程を描くとともに、今後の展望について語ってくれたことも盛り込んでいます。

【想い紡ぐ】
住吉酒販(福岡県福岡市)
前号から始まった酒販店対象の新企画は社長の庄島健泰氏が考案した酒碗に話題を振り切り、その概念や魅力、さらには器を含む日本の伝統文化や美学に至るまでの話をぎゅっと凝縮して記事にしました。

取材時、庄島氏の計らいで酒碗とワイングラスとの飲み比べを体験させていただいたのですが、素材や形状によってお酒の表情に圧倒的な差が感じられてただただ驚きました。
ワイングラスで飲む酒には酸や苦みといった一つひとつの味のパーツがくっきりと感じられる一方、酒碗に注がれた酒はそれらが溶け合ってまろやかになるだけでなく、甘みや旨み、酸や苦みの層が繊細に描かれることで深い味わいに昇華するのです。
特にスパークリング清酒をきき比べたときの衝撃といったら!
詳しくは記事にてぜひ。

東京と福岡にある酒碗のギャラリー「TENSHUDO(天酒堂)」では、唐津や瀬戸、信楽などの作家が手掛けた1点ものの酒碗に出合うことができます。
私も東京へ行ったときには1点求めるつもり。
合わせるお料理やシチュエーション、誰と飲むかといった条件でお酒の味わいがぐっと増すように、器もまたお酒がもつポテンシャルを引き上げてくれる。
そんな素晴らしさを、今回の記事を通して多くの方と共有できれば幸いです。



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